一番頼りにしていた人が、仕事を辞めることになった。
自分勝手だけど、辞めてほしくなかった。
その人がいるだけで安心できたし、困ったときは助けてもらっていた。
これから先のことを考えると不安でしかない。
それでも、引き止めたいとは思えなかった。
その人が辞める理由は、なにか大きな出来事があったわけではない。
人間関係の中で感じる小さな嫌なこと。
理不尽さや気疲れ。飲み込んできた言葉や我慢。
ひとつひとつは些細な事かもしれない。
でも、それは毎日少しずつ積み上がり、確実に心が削られていく。
気づいた時には体が拒否反応を示し、鉛のように動けなくなる。
私はその状況を知っている。それが体調不良の始まりなことを。
だから、辞めないでくださいなんて言えなかった。
これ以上、この場所にいてはいけないとすら思う。
私もまた毎日辞めたいと思いながら働いている。
いつでも辞めていいんだよと言い聞かせながら、なんとか今日を乗り切っている。
だからその人の気持ちが、決断が誰よりも理解できた気がした。
限界が来る前に離れること。自分を守ること。
それは逃げることではない。とても賢明な判断。
悲しかった。なにも力になれなかったこと。
そこまでその人が追い詰められていたことも。
そしてその人を通して私自身を見ている気がした。